承元元年、越後へ遠流となった親鸞聖人が、その途中・越前の鯖江にて立ち寄られたという「車の道場」があります。
これは、現在の福井県鯖江市にある真宗誠照寺派の上野別堂のこと。
現在は、寝殿造りの本堂が、ポツンと建っています。
元々は、この地の豪族・波多野景之の屋敷でした。もともと信仰に厚かったと言われる景之が、親鸞聖人から教えを請うために招待しました。
その時の様子を、寺伝には、「聖人輿をよせ、車を止めたまいし由緒をもって、世人呼んで車の道場という」とあります。
つまり、親鸞聖人は輿(車)に乗せられて訪れられた、だから『車の道場』と呼ばれるようになった、というのです。
伝承に沿って作られた伝絵には、輿に乗っておられる聖人が描かれています。
しかし、それは後に聖人の権威を落とさないように寺で配慮して描かれたものであろうと思います。この時、罪人としての扱いを受けられていたでしょうから、やはり農作業用の粗末な車に乗せられてきたと考えるべきでしょう。
ともあれ、越前の道は相当険しく、親鸞聖人は御足を傷められ、やむなく車に乗せられたのでしょう。
景之は、屋敷に到着された親鸞聖人を、近くにあった井戸水に案内し、聖人はお疲れを癒されたと伝えられます。傷を冷やされたのでしょう。その井戸は、「承元の井」といわれ、今でも「車の道場」の前に存在します。
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